| 続・ビジネス中国語えとせとら(8) 関西外国語大学教授 戸毛 敏美 |
| 日中・中日貿易用語辞典編集を終えて |
日中間の経済貿易協力が深まるにつれ、ビジネス中国語が重視されるようになり、今は亡き伊地治先生の提唱で十数年前に日本ビジネス中国語学会が誕生しました。
この学会はまだ小さいのですが、ビジネス中国語普及に活躍しており、つい最近も毎年恒例のビジネス中国語検定試験が実施され、本年は大阪に次いで東京でも行われ、多くの方が参加しました。そして受験者たちはこの資格を就職活動などに活かしております。
また各大学でも最近相次いでビジネス中国語に関するコースが開設され、ビジネス中国語を学ぶ人口がますます増えております。中国語検定試験でも数年前から「スコア式ビジネス中国語検定試験」が実施され、多数の方が受験して資格を取り就職などに生かしています。またHSK(中国漢語水準検定試験)でも最近ビジネス中国語に関するテストを実施しようとする動きが出ています。北京放送でもビジネス中国語講座が開設されております。
この度、このような社会のニーズに応えて、日本ビジネス中国語学会会長を務め、友好貿易時代から長年蝶理で活躍され、豊富なビジネス経験を持つ藤本恒先生、そしてかつて中国科学院で文字改革・ピンイン改革などで活躍され、日本の大学で長年中国語を教えておられ、しかもパソコンの扱いでは専門家顔負けと言われるほどの大家胡先生と一緒に、標記の「中日/日中貿易用語辞典」を編纂する仕事に参加できたことを大変幸運に思います。辞書の編纂は私にとって二回目のことですが、この十年にわたる作業では、お二人から、そして東方書店の校正をされた方々から、多くのことを学ぶことができました。
本辞書の特徴
1.パソコンを駆使して膨大なデータから、頻度の高い用語を検索していることです。
前書きで藤本先生が述べられているように、かつて私たちはとにかく辞書を片っ端から覚える方法、単語をどんどん頭に詰め込み覚えることから語学の勉強をしたものです。でも現在は多忙、情報過多の時代であるため、限られた時間と精力を有効に使うことを考えなければならず、そこで先ず、最初に手掛けたことはどの単語を辞書に盛り込むかの作業でありました。ここで胡先生のパソコン技術が大いに威力を発揮しました。先ず経済貿易関係の新聞、書籍、文章を出来るだけ沢山収集して、それをパソコンに入力し、次にそれらを検索して頻度を調べ、其の上で頻繁に用いられる経済・貿易用語に的を絞って編集しました。 また、単語のみの辞書というのは多いのですが、本書はそれらにできるだけ最適な例文を選び、またできるだけ多くつけ、しかもその一つ一つの例文に最適な対訳を付け、学習者がこの辞典の例文を読んで、翻訳の勉強ができるように、翻訳の参考書になれるようにと考えて編纂しました。「三人寄れば文殊の知恵」「三个臭皮匠, ???葛亮」と言われるように、今回はそれぞれ三人の特色が存分に発揮されたと思います。 また日頃は「得其意・忘其形」を翻訳のモットーにして翻訳しているのですが、いざ細かく点検してみると、うっかり原文に囚われてしまって、日本語が中国語臭くなっているところがあったり、中国語が日本語式の訳文になっていたりして、校正する度に三人で手を加え、繰り返し読み合わせをしては数回修正しましたので、かなり理想的な文章になっているはずです。
2.的を外さず! 中国語の単語は、ピンインの「離合詞」に至るまでチェックしましたし、中文の例文も長い文章の一部分を引用していますので、どうしても整合性に欠ける部分がでてきます。私たち日本人だけでは「少しおかしいかな」と思っても手を入れられなかったのですが、この点は中国語の大家胡先生が中心になって何度も読み返し、「的」外しの文が結構ありましたが、「的」の一字も疎かにすることなく細かくチェックして入れていきましたので、中文の部分も自信を持ってお手本となりうる文章と言って皆様にお勧めできます。
3.日本語の部分はかなり時間を掛けて、送り仮名一つ一つも再チェックしました。 当初私共は簡単に考えておりましたが、送り仮名については思いもよらぬ時間が掛かりました。というのも我々日本人は無意識に送り仮名を用いてきたきらいがあり、このたびは改めて送り仮名を振り返る機会となりました。例えば「支払い」?「支払う」?「支払伝票」?「支払人」?「支払い渡し」?どれにどの送り仮名をつけるのか、つまり名詞には送り仮名を省略し、動詞の場合には送り仮名を振るなどを、全文再点検して統一していきました。そこで私共は広辞苑を基礎に更に綿密に日本文の送り仮名を点検しなおして、全篇の日本語文の送り仮名を統一する作業を行いました。これにもパソコンという武器が大いに役立ちました。
4.膨大な付録がついていること。 まず私共がビジネス文を作成したり、翻訳したりする中で、実際ぶつかった困難や実体験を出し合うことから作業が始まり、お互いにこれまで集めてきた単語帳も出し合いました。それらは通常の辞書には載っていない部分がかなりありました。 例えば会計用語は、日本の会計が最近国際会計法に準ずるようになったこともあり、また中国の改革開放度が進むにつれ、金融関係業界など従来外資系企業が参入できなかった業界にも外資系企業が参入を許されるようになり、外資系企業の活動範囲が拡大したことにより、会計用語もどんどん変化・増加してきました。それを追いかけながら、収集した単語を再整理し手を加えて、新しい情勢下での会計処理に相応しいようにと努めました。勿論時代はどんどん変化発展しておりますので、まだまだ追いついていない分野があると思いますが、今回の辞書はかなり追いついていると思っています。
例えば、この辞書の単語を収集・編集している過程でソ連が崩壊し、ECがEUになり、中国のWTO加盟が実現するなど大きな変化が現れました。その度に、私どもは内容、説明文の変更を余儀なくされ、用語を改めて点検しなおし、編集作業を進めてきました。 しかし、過去の文章にこれら古い単語が載っている可能性があることを考慮して、例えば通貨名称でも、ユーロ以外にかつて欧州の各国がそれぞれ使用してきた通貨の名称も、出来るだけ完全に収集して載せています。
5.日本語を学ぶ中国人学習者へも配慮 最近ビジネス中国語・日本語を学ぶ人口はかなりふえており、殊に中国人が増えております。これら日本語を学ぶ中国人学習者へも配慮しまして、日本語の単語は全部平仮名から索引できるようにし、平仮名に相当する漢字も併記しました。これは日本人学習者にとっても、特に若い人々の漢字離れを考慮すれば、参考になる辞書かと思います。また実際ビジネス関連の挨拶文、通信文では、新聞などではひらがな表記の語彙でもよく漢字が用いられています。そこで「日本当用漢字」の規定にこだわることなく、ビジネス界でよく用いられている漢字も、仮名と併記する形で漢字を記しました。従って、敢えてビジネスで良く用いられている漢字を使い表現するよう心がけたので、この辞書を通じてビジネス通信文などで使う漢字の勉強もして戴きたいと思っております。
また実際翻訳の仕事を進められている方が困るのは、特に日本語の通信文、挨拶文などの翻訳時に困るのは、日本語独特の表現をどう翻訳するかです。時には一字の適訳を探すために、何日も資料を調べたりする経験をお持ちでしょう。これも出来るだけ例を収集して載せましたので、大いに参考になると思います。
また中国でも最近の若い人丁寧な挨拶文が書けないと言われております。そこで今回は中国でも廃れているかもしれませんが、中国語でのこれら挨拶文、案内文、通信文の用語なども収集して載せましたので、これらは多いに参考にされたいと思います。
最近では中国語ジャーナルにも、「ビジネスシーンでのフォーマル表現」というコーナーで紹介され始めましたてように、かつてよく用いられた敬語が復活する傾向があるのかもしれませんので、この辞書はある程度収集したものを載せました。 勿論香港や台湾ではもっと古文風の表現が多く用いられており、これらは今後大陸でも広まるかもしれません。それらは今回全部収集できませんでしたが、この辞書は主に中国本土からの通信文、挨拶文、案内状などを基礎に単語を収集編纂しております。
6.英語表記
貿易用語には多くの英語が用いられており、これらには日本風の読みが多く見られるので、できるだけ英語も併記してある。従ってこの辞書を参考にして貿易手続きに必要最低の英語も学ぶことができるので、この辞書は活用対象、範囲が広いのではないでしょうか。
従って、英文略語からも索引できるよう工夫し、常用貿易用語英文略語の付録もつけてあります。 最後に中国語に関する規則も付し、語学を学ぶ方々にピンインの表記法や数字の正しい表記法などに迷った場合、ちょっと調べられるようにと載せてありますので是非ご愛用ください。
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