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中国の格差について
6月22日、中国と北朝鮮の格差問題について話をする機会をいただいた。北朝鮮はともかく中国と接することの多くなった日本人には中国の格差問題は直接感じることのできる問題にもなりつつある。私のゼミでも、以前大金持ちの娘を研究生で受け入れていたが、その研究生がバイトもしないまま車を買おうとしたらしいことを後で知った。日本人学生、院生がバイトで苦労している一方で、これは一体どうしたのかと思った次第である。
しかし、残念ながら、この種の個人間の所得格差について詳しいデータを小生は持たないので、「地域格差」、特に「省間格差」についてのみここでは報告したい。そして、その結論は実は世の一般的な理解に反してかなり肯定的な現状評価となる。
そのために次の2つのグラフを見られたい。この上のグラフは中国を東部(沿海部)と西部、中部の三地域に分けた際の「地域格差」を地域間のそれと地域内のそれに分解して示したものであるが、ここで見られるように、改革開放の開始後の全体としての格差は特に1990年以降に拡大しているものの、その原因は「地域間格差」の拡大にあり「地域内格差」の拡大にはないこと、もっと言うと、「地域内格差」はむしろこの間縮小の過程にあったことが示されている。
あるいは、下のグラフを見ると西部地域内や中部地域内の格差はほとんど変わっていない一方で、東部地域内だけは地域内格差が急速に縮小しており、その結果としての上図の「地域内格差」の縮小であることが分かる。つまり、ここでは、当初上海などごく一部の地域しか富裕でなかった東部において、その他の地域の成長が加速し、その結果として東部地域内の格差が縮小したこと。そして、それが逆に東部全体の平均所得を引き上げ、その結果として、東部と他の地域との格差を拡大したことが理解できる。つまり、この意味での「地域間格差の拡大」は実は「東部地域内での格差の縮小」の表れであるのであって、こうした成長地区がさらに内陸部に向かう過渡的状況にすぎないことが分かるのである。
北朝鮮の格差について
北朝鮮については、昨夏に訪問調査したのでかなりのことが分かった。その最も大きなことは、公式に払われている賃金ではとても生活が賄えないが、逆に言うと誰もがそれぞれ商売などをして「公式」外の収入を得るようになっているということである。たとえば、平壌の自由市場で小生が買った1kgのビスケットは2300ウォンであったが、これは工場労働者や公務員の公定賃金2500-3000ウォンに匹敵する。つまり、この賃金外の何倍、何十倍の所得をそれぞれが得ているのであって、これは実態としての市場経済がすでに相当の規模にまで膨らんでいることを意味する。
RENKという反北朝鮮組織の情報では、元々北朝鮮には@幹部及び外貨稼ぎ部門の家、A白米を食べる家、Bトウモロコシを食べる家、C薄い粥を食べる家、D浮浪者という社会階層が存在したが、4-5年前には@20%,A25%,B25%,C25%,D5%だったこの比率が、ここ1-2年の間に@+A50%程度,B0%,C4?50%,D0%になったとされている。所得格差の両極化と最貧層の消滅がここでの特徴である。
また、これらそれぞれの階層の所得も、先のRENKという組織や韓国国内の北朝鮮情報サイトの情報を活用するとある程度推定することができる。それによると、それぞれの月収が第@階層=100万ウォン、第A階層=12万ウォン、第B階層=3.5万ウォン、第C階層=1万ウォンということになるが、これはつまり、第C階層でさえ「公定賃金」の四倍の所得を得ていることを意味している。また、人口の20-30%を占める第@階層が月収100万ウォンというのはややオーバー・エスティメイトである可能性もあるが、これは限られた情報源での推定ということで、ご理解願いたい。
それで、このオーバー・エスティメイトの問題を無視して計算を続けると次のようなふたつの興味ある結果を得ることができる。そのひとつは、「公的賃金」をすべての就業者が得ていると仮定したうえで、そのマクロ的な総額と他方の「民間経済」の総所得との比率の計算であり、それは1:114となった。この数字が正しければ、北朝鮮経済はすでに99%まで「民営化」されていることになる。
また、もうひとつの数字は現在4つの階層で構成されている国民の所得格差をジニ係数という指標で測るというものであり、その結果は0.675という数字となった。これは、駒澤大学助教授山口浩氏がウェブサイトで公開している世界123ケ国のジニ係数比較ではナミビアについで第二位の所得不平等国ということになる。中国の0.33、アメリカの0.299、日本の0.217と比べられたい。総じて、北朝鮮経済が市場経済化していないという日本の巷の理解も間違っているが、北朝鮮が平等国家というのも今や大間違いである。大幅な格差の拡大を伴いながら急速に市場経済化しているというのが実態である。
出所)大西・矢野編『中国経済の数量分析』(2003)所収毛三良論文の図7-2,3を延長したもの。
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