| おじゃまします(53) 第二部<わが社の中国ビジネス−10> |
内藤証券株式会社
リポーター 南島順子 |
今回は中国株でトップクラスの取り扱いを誇る内藤証券の訪問である。分厚い資料を腕一杯に抱えて応対してくれたのは執行役員中国部担当・営業推進部長の廣瀬政弘氏。ところがこの廣瀬氏、バリバリの、頭から足の先まで「証券マン」だった。延々3時間半に及ぶインタビューは全編、“株”、“株”、“株”・・・。熱っぽく、滔々と、しかもかなりの早口で中国株のお話を懇切、丁寧に教授してくださった。 したがって今号では「内藤証券」という会社の紹介は少なめにして、廣瀬氏から伝授いただいた中国株情報を紹介したいと思います。 “いま、なぜ、「中国株」が「買い」なのか”・・・ご参考になれば幸いです。
改革スタート、長期安定資金流入の中国株式市場 中国は今、証券市場に改革の大きな波が押し寄せ、マーケットが一変してきている。
これまでの中国の証券市場は、国有企業改革の一環として国有企業、所謂〇〇集団の中の利益部門であった製造部門だけが株式化され上場されていました。また、以前の日本のNTTやJRのようにほとんどの株式は国や地方政府が所有し、市場で流通しない非流通株が約60%を占めていました。残りの約40%が市場で売買できる流通株ですが、そのうちわれわれ外国人が売買できる市場は規模も小さく時価総額で中国本土市場全体から見れば5%程度のB株市場です。ところが最近(ここ2、3年)証券法が次々に改正され、中でも、非流通株については各企業が株主総会で3分の2の議決を得ると流通化が認められるようになりました。2006年6月現在で全上場企業のうち約7割の企業が非流通株の流通化を決議しました。また外国人にも現地中国人しか売買できなかったA株市場に参加が認められるようになり、現在までに約40の金融機関、総額100億ドル(邦貨換算1.2兆円)の規模になっています。 また、今年の2月から海外の戦略投資家がA株を10%以上買い付けできるようになりました。これらの一連の改革は、経済の規模に比べ著しく小さな株式市場を流動性の高い長期安定的なマーケットへ転換させる動きとして好意的に捉えるべきだと思います。さらに上場企業の情報開示の問題で、単独決算はプラスだが集団ではマイナスというのが多々あります。(日本でも以前は単独黒字連結赤字といったことがありましたが)また、中国では、今日本でも話題になっているインサイダー取引が特に多く問題になっています。このため今回の証券法の改正では、ディスクロジャーをきちんとしないといけないとか、インサイダー取引には罰則を設けるといった、かなり厳しい改訂となっており、市場の信頼性透明性に重点を置いたものになっています。
個人消費の活発化をはかる中国 さて、上記のような状況の中国株市場で株を扱う場合、一番大事なことは、中央の政策がどう変わって行くか、どういうところに力を入れていくかということをよく見ること併せて常に中国経済に関心を払い、実態をきちんと見ていかないといけない。そして日本経済の発展の過程やメカニズムがこれからの中国株投資に大変参考になると思います。 例えば、現在の日本の貯蓄率は約4%。日本の貯蓄率が最も高かったのは1978年頃で23%でした。当時の高度成長を支えたかなりの部分は、この高い貯蓄率で郵貯の資金は財政投融資による公共投資に向けられ社会資本の充実が図られ、銀行預金は企業への貸出しに回り、民間の設備投資が活発化し経済が発展しました。 現在中国の貯蓄率は一説には46%といわれています。(疑わしいのですが)つまり中国の人々は可処分所得の中で約半分を貯蓄に回しているということになります。中国は日本と統計のとり方が違いますが、民間の設備投資と中央の公共投資と両方含めたものを固定資産投資といいますが、年率30%増の勢いで伸びています。国民の高い貯蓄率もあって、中国は今まさに日本の高度成長期に匹敵するあるいはそれ以上の状況にあるといえます。 また中国の名目GDPは世界4番目だが一人当たりで見ると約1200ドル、まだまだ貧しい国だと言われています。ところが珠江デルタ地帯や長江デルタ地帯などに眼を向けると、そこに住む約3億人のGDPは一人当たり約5000ドルとも7000jといわれ、しかも10万ドル以上(購買力平価で見れば邦貨1億円相当)の資産を持つ人は5000万人とも言われ、そういう人たちが毎年10%くらいの割りでどんどん増えている。そのため個人消費も活発で、高額な耐久消費財の伸びは世界的に見ても中国が筆頭でないでしょうか。 昨年、日本の対中国輸出入総額は対アメリカを越え、中国が60年かけて初めてトップに躍り出ました。ここ数年日本の景気が持ち直してきましたが、かなりの部分中国への輸出が伸びたことに負うところが大きかったと思います。
おすすめ中国株は・・・ では、この「今お買い時」の中国株、どういう銘柄を選べばよいのでしょうか。 最近の中国、年収で高級車を簡単に買える人たちがたくさん出てきています。車がどんどん売れる時代になってきているのです。そうすると車を作っている会社の中で国が残そうとしている企業、勝ち残れる会社を探してみるのです。いま中国の自動車会社は約150社、その中で残るのはおそらく15社か20社でしょう。さらに自動車部品会社も今後は注目されるでしょう。中国でも自動車部品で優れた技術を持っている会社は中国国内では販売せずに、むしろ海外へ輸出していますが、そういう会社もいま中国国内の自動車生産販売が伸びたことによって次々と国内に戻ってきています。そういった技術力の高い会社に注目すると結構面白い。もうひとつ注目すべきなのは鉄道です。これはエネルギー問題もありますが、むしろ環境問題から、中国政府はこれから全国的に鉄道網を敷いていくでしょう。また環境に絡んでいる会社も良いでしょう。 いずれにしろ中央の政策や中央に絡んでいる会社が良い。基幹産業の中でも政府がつぶしたくない部門をもった企業や、絶対につぶすことの出来ない4大商業銀行とかエネルギー関連等で、しかも株価のまだ安いものが良いと思います。自動車や鉄道に関連している会社がないか、環境に絡んでいる会社はないか、つぶれる心配のない会社を選び、なおかつじっくり中長期で持っていくという姿勢が大切です。今までは、中国の方は一般的に投機好きで目先で動かないと買わない短期的なマーケットでしたが、これからは外国人投資家が増え長期的なマーケットに変貌するでしょう。それだけに長期的視点に立ってじっくり観察すれば、買える会社、買えない会社がよく見えてくるでしょう。 それでも中国株に投資するときは、分散投資が基本です。分散投資ですが私はまずひとつめは中国でこれから本当に国が力を入れるような政策にのっとった会社。ふたつめは、つぶれる心配はなく配当利回りが高いもの。最後にひとつ博打をうつのもいいでしょう。もしかすると大化けするかもしれない、株価は安いがつぶれるおそれがある会社といったところにと分けて投資をしてみてはどうでしょうか。
もうひとつの投資方法 中国の企業に直接投資する。あるいは、中国で事業をする。正直言ってなかなか儲からないのではないか、中国の場合、ある事業が儲かるとなると、すぐ競争相手が現れて値下げ競争に走り、ほとんどの事業で企業の利益率は常に低いものになってしまいます。EUは環境という名を借りて中国の商品を締め出そうとしています。環境のために製造物廃棄処分費用などを中国側が持たなければいけないということになれば、もう中国は輸出できないという話があるくらいです。また、このところ中国は少し貸出金利を上げてきています。企業業績にも多少の影響が出てくるだろうし、業績水準から見て既に一部の銘柄は割高になっている。それでも配当利回りを見ると高いものがあり、リスクが少なくてすみます。 現在の中国株の平均的な配当利回りは4〜5%です。一割近くの配当を出す会社も多い。しかも国営企業で株価は安く、なおかつ配当利回り6〜5%という企業もまだまだたくさんあります。
そこで「中国企業の株に投資して提携」する方法をおすすめします。中国では一度投資したら撤退するのが大変難しいと言われるが、株であったなら撤退するのも簡単。直接向こうで事業をやるのに何千万、何億もかけることを考えると、むしろ株を持ったほうがより安全です。環境関連等では中国側は技術を欲しているのだから、たとえば環境関連の企業の株を持ち、技術などで協力して行くのも良い。とりあえず10%の株を持つという形で経営に参加するというのが一番良いのではないでしょうか。 中国は国内の技術をできるだけ育てていかなければいけない時期です。その中国が一番必要としている技術は日本が持っていますが、それに関連しているような企業がこれから伸びるでしょう。そういう会社を探し、投資し、技術協力をするという方法も考えられるでしょう。
必須の現地訪問 というわけで、3時間にわたる廣瀬氏の中国株の授業の、ほんの一部を抜粋要約させていただいたわけだが、生粋の営業マンである廣瀬氏、顧客に儲けていただくことがまず第一だと言う。わからない会社を買わされて損するのが一番いやなもので、証券会社も顧客も、投資対象を理解しよく調べていなければ株はなかなか儲かるものではない。儲かるためにはやはり情報をきちんと集めて積み上げていかなければならない。ということで、内藤証券のポリシーは中国株については「現地訪問、取材」が基本なのだ。そのため精鋭のアナリストが2ケ月に一度、2週間くらいかけて現地の企業を15〜20社訪問、実際に董事長や総経理(日本で言えば会長や社長)に会い、会社の方針や社長のビジョンを聞き出し、会社の業績数字について細かく質問し、また工場での従業員の働きぶりや、扱っている商品について調べるなど、いろいろの角度から企業を調べ上げ、その中から顧客に薦める銘柄を選んでいるとのこと。 神奈川に家族をおいて本店営業推進部長として大阪に単身赴任していた廣瀬氏は、7月から東京の投資情報本部長として異動した。今度は中国株と日本株の情報発信をする部門、個人営業から離れますが、これからもお客様の視点に立って情報を発信していきたいとのことだ。毎年、年のはじめに過去にお世話になったお客様、昨年は約400名になったそうだが、景気や経済の動向を彼なりの分析を付け加えた年賀状を発送することを20年間続けているそうだ。彼の年賀状を毎年楽しみにしているお客様がいて長く続いているとのこと。 「中国にはまだまだ不透明な部分が多いが、日本株でいままで経験してきたことが中国の株式市場で生きてくると思います。中国は社会主義といっても今は日本以上に資本主義社会と考えたほうが良い。そして、日本の高度成長期、バブル期も含め、過去のそれぞれの時代で活躍した企業や成長した企業はどのような企業であったか、今の中国の企業ではどのような企業がそれに当てはまるか、該当する企業があれば、おそらくこれから同じように成長し株価も上昇することが予想できます。ですから、企業を選ぶ時には、日本の株式市場での30年間の私の営業経験か役に立つと考えています。私が得てきたさまざまな知識や経験をもとに、中国株式市場のこれからのストーリーを描くことが出来るのではと自負しています。」とさわやかに言い切る氏の顔には、今後の中国経済を読み、乗り切る強い自信がみなぎっていた。 現地訪問のための中国渡航も相変わらず頻繁。「掛け持ちでますますお忙しいですね」という問いかけに、ニコッとうれしそうに微笑んで答えた一言が「好きですから」・・・。そう、彼はその人生の内の大半、35年を株一筋にかけてきた生粋の、いや骨の髄までトコトンの『証券マン』なのでした。
内藤証券と廣瀬政弘氏 内藤証券は1993年に上海取引所の域外代理所の認可を得た。これは中国マーケットに直接注文が出せる代理商の資格を日本企業で初めて取得したという、いわば中国株取引のパイオニアであり、中国株取引高では日本のトップクラスの証券会社である。現在上海に駐在事務所を置く。ネットで紹介している中国株案内は詳しくて正確、紹介商品も豊富で、まさに“足で集めた”情報が掲載されているため、ネットで株を売買する人が圧倒的に多い。スタッフは東京8人、上海4人で12人。業界でもトップクラスの陣容を誇る。今年は中国人4名入社。 内藤証券が中国に早くから着目したのは、社長がその昔ロンドンに駐在していて日本に戻ったとき、ロンドンがいかにさびしく日本がいかに活気に満ちているかという状況を見た。そして92年頃に中国に行くと、全く同じものを感じたという。92年だから日本はバブルがはじけ、中国は建設ラッシュのときだ。上海の活気に満ちた若さを感じ、これからはおそらく中国の時代になるだろう、大阪の地場証券で中小証券の場合は何か特徴を出さなければいけないと考え中国進出に踏み出したわけだ。そのころは関西のある証券会社からは「中国なんかやって」と笑われたそうだ。 一方、廣瀬氏は45年慶応大学経済学部卒業後山一證券に入社。以来、ずっと証券マンとして歩いてきた。新潟の支店長をしているときに山一が倒産。山一時代の業務はそのほとんどが個人営業である。内藤証券に入社後は山一で培った個人営業の腕を生かし即本店営業推進部部長に。個人の顧客に株をすすめるかたわら、中国について勉強したという。そこで2003年4月中国部担当役員に就任。2003年9月に上海事務所が開設した。 |
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