なみかわかほこの「私と中国の30年」(21)    
通  訳
 一般的に通訳とは有る人の言葉(用件)を別の方に訳して伝える任務官を言う。
 つまり、有る人の言いたい事(用件)を正しく別の人に伝えるのが目的と役割である。
 
したがって通訳者は自分の国の言葉を正しく知ると共に、自国の風俗・習慣・人情・文化面等をも心得るのは無論の事、相手国の言葉に精通するばかりではなく、上記の様な事をもよく理解する必要があります。
 只だ言葉ができるだけでは良い、良心的な通訳とはいえないと思います。
 通訳とは非常に重要な責任ある仕事と言えましょう。

 そして通訳をする時の技術的なテクニック面からいうと、たとえば、日本語のセンテンスは長い、中国語の三倍はある。
 したがって日本語を中国語に訳すと短くて早く終わってしまう。日本人からすると、さては自分の言った事を端折ったのではないのか、この通訳は下手なのでは、と疑われる事もあります。
 また中国語を日本語に訳す時はこの逆で、言った事をより長く話すので、さてはいらん事まで付け加えたのかと思われかねません。
 これらの事は通訳のみが知る辛さです。

 しかし、上手な、経験豊かな通訳になりますと、これらの面を技術的にカバーして処理する事ができます。
 又、通訳者は自分の考えをまじえて通訳してはいけません。
 しかし、通訳者もひとりの人間です。通訳する時は無感情、無私情で機械的に通訳をすればよいのだと言われる事もありますが、そんなことになると結果は明白です。
 本来、潤滑油的な通訳が、味もソッケもない機械語になってしまいます。
 通訳とは自分の考えを交えないで、相手国の風俗、習慣、用語を考えながら、言葉、表情を選ぶ必要があります。
 国籍的立場から通訳する時、果たして個人的な感情を無視して中国人が日本人の通訳をする、或いはその反対の通訳はできるのでしょうか。(世間話しとか場つなぎならよいですが)

 例を上げると、政治、値段交渉、新合弁交渉、損害交渉、品質面、技術面の要求、契約、処理等の場合はやはり自国の同国籍の者が通訳した方がよいと思います。
 通訳を地位的に見た場合、外国の報酬は時間制で、収入も高い。日本の場合は日当制が多い。又、中国の通訳となると地位的に高い。
 日本での現状は政府機関に勤めている人の事はわかりませんが、かなりの通訳者は独学で、レベルもマチマチ。収入も不安定、というのが現実のようです。

 近年、日本には中国人留学生が増え(1980年代から)、かなりの企業は、中国帰国子女や留学生を安く使っているらしく、日本の通訳業界の畑を荒らされたとも聞きます。
 通訳の重要さを考えた時、安かろうはまずかろうにつながることもあるのではと思います。
 日本側の値引き範囲が中国側に事前に知られた事とか、通訳をした会社の内容を他に公開したりもよく聞く話です。
 トラブルとか不快な思い、或いは心意が伝わっていなかった事もよく聞きます。
 下手をすると両国間の友好をも損ないかねない事も起きるかも、通訳とはそれほど難しい仕事なのです。

 海外へ行かれて仕事をされる総経理・技術者・出張者の方はできれば自国の通訳者を使う事をお勧め申し上げたいです。
 そして、通訳者を使う場合、普段から交流のある仲とか、少しでも事前に打ち合わせの時間をさいて通訳者に心意・目的などを理解してもらう気配りも必要なのではと私の経験から申し上げたい。

                        (2003年6月出版「私と中国の三十年」より)