なみかわかほこの「私と中国の30年」(11)    
上海小姐はおやつ好き
 上海におけるスナック類の多さは中国一ではないでしょうか。
 そんな状況も手伝って、若い女性のおやつ好きが企業の衛生に大きな影響を及ぼします。
 つまらない事のようでも、これもまた企業イメージと管理職の能力に関わってきます。
 
 果物、菓子、粽(ちまき)などを会社に持参し、休み時間に食べる社員は多く、それも互いに競い合うような雰囲気さえ感じられます。
 だが好き嫌いの多い上海小姐(お嬢さん)は会社から支給される昼食はよく残します。
 「田舎出の娘だったら全部食べきれるのよ」と、都会っ子は軽蔑の言葉を口にします。

 上海はダイエット志向が強いためか、持参したキュウリやトマトを食べて昼食を抜く社員もいました。
 お弁当代は会社持ちで自分は損をしないので、残しても惜しくはないのでしょう。
 中国の内陸部の食料事情や、地球上の子供が餓死している現状を知ってもらう啓蒙活動も行いましたが、効果はありませんでした。
 その一方では職員の休憩室には腐りかけた西瓜の切れ端、トマト、もも、パンなどが溜まっています。やむを得ず、食品の持ち込みを禁止することになりました。
 まさにこういう事が起るのは総務の怠慢です。

 若い女性ならではの要望もあり、忘年会などの抽選会には、全員が当たるように準備しました。 景品は主として私が日本から持って来たヘア飾り、靴下、キーホルダー、小さい財布など、女の子が好みそうな物と日本の結婚の引き出物なども入れました。
 最初は私個人の主催でしたが、毎年恒例になった事もあり、費用が会社の福祉費から支給されるようになりました。
 景品は日本の100円均一の商品に加えて、私の社宅での会食の招待券なども入れました。 抽選は私情が入らないので不服が起こりません。これもみんなの楽しみの一つでした。
 当時流行のディスコのダンスホールを借り切ってパーティをした事もあります。

 訴えたい社員もあるので一人一人に耳を貸す時間はないので、投書箱を設けました。
 私が開けて読みましたが、内容は主として管理職への不満と福利厚生への要望でした。賃上げは要求ナシと会社の規則として発表しました。
 
 社員の福利については、中国政府が制定した条例と、会社が独自に作った規定がありました。女性の多い会社の規則は、各方面に気を配らなければなりませんでした。
 例えば、社員旅行の規則を制定する場合、旅費を全額会社負担とすると、病欠者、妊産婦にはどう対応するのかという問題が現れます。
 つまりその分支給しろとなるので検討の結果、三分の一を個人負担としました。こうすれば行けない者にはお金を支給しなくてもいいことになります。
 
 有給休暇は勤務年数によって日数が異なりますが上限日数を規定すべきです。10日を上限として二回に分けて休む、子供のいる母親社員には三回とかにして融通を利かせます。
 今となっては週休二日制が国家規定になったので有休は日本より少なくてよいのですが、新規の規定を公布、作成するときには十分に検討し、弁護士(会社と年間契約の方法もある)が労働局と相談した上、正式に公布する事が重要です。
 しかし公布した内容でも、後日不合理となった時は、改定して改めれば済む事です。
                             (2003年6月出版「私と中国の三十年」より)