はらだおさむの体感的日中経済貿易小史
       
あのとき・あのころ
第一部
   
(40)「おかげさまで30周年」誌から(2) 「北京」(2)
 マイナス17度の荒野は、夜というのに、真っ白であった。
 トラックを、青い狼の目が追ってくる。ものすごい数だ。
 「Fさん、カゼひいたよ」
 油田での技術交流では、メーカーのひとりに39度の熱を出させた。
 「たいした熱ではありませんよ」となだめるF。
 ひとりのために北京へ戻ることなど出来ない相談なのである。
 この2月のことであった。
 
 こんな苦労にもかかわらず、華国鋒の調整政策で、ほとんどの引き合いはストップされた。
 幸いなことに、北京での自動車部品生産プラントの話は進行され、79年10月、契約に成功したのである。

 きょうも、商談でもらった宿題を片付けると、12時前になっていた。
 自家用(自転車)に乗ると、30分ほどのところにある電報局に走らせた。
 灯りの少ない家並みのなかに、湯気にくもった光がみえる。夜勤の人たちのための夜店だ。
 いつもはそそられる胃袋も、今夜は先ほどのNの差し入れで、見向きもしない。
 
 電報を打ち終えると、Fは「古瓷」を一本くわえ、思いきり吸い込んだ。
 (これも、何千種もある中国タバコのなかから、ようやく選んだ好みの味がする銘柄だ)。
 18ヶ月目の味だなぁ・・・・と、Fは深く思った。